大変汚い話なので、食事中や妊娠中、体調の優れない人には読んでほしくないのだが、私の家から駅までの道のりに犬のフンがよく落ちている。
私の家から駅までのルートは大きく分けて3つある。車通りの多い大きな道、飲み屋の連なる道、そして犬のフンの道だ。
犬のフンの道は1番近道なので、そこをメインに使っている。
車は通れない狭い道で、人同士がすれ違うのも少し気を使う。
その道に建つ家は数軒あるのだが、どれも人が住んでいるか不思議なほど古い家で、晴れた日でも陰鬱とした空気に包まれている。
ツタに覆われていたり、そばに植えてある大きな木で落ち葉まみれになっていたりする。
引っ越してからたった数日で、犬のフンを見た。
大通りから近道に曲がってすぐの電信柱の麓に2個あった。
見たくはないので、なるべく視界に入れないようにして通った。
それから2週間ほどで立て続けに2回見た。
1回目のフンは道の真ん中にあり、次のフンはその道を駅の方面まで歩いたところの曲がり角にあった。
どちらも2個あった。
通勤の朝に見るフンは決していいものではない。
しかもそのフンは誰かが撤去してくれる訳ではなく、風化するまでそこにある。
フンのサイズに詳しくないけど、結構でかい。
風化するにも2週間以上はかかる。
だから毎朝その場所が視界に入らないように気をつけながら通勤するし、夜は街灯が少なくて暗いので、フンを踏まないように気をつけながら帰ってくる。
その後も、2ヶ月に1回のペースで新しいフンは現れた。
ある日、その道に「犬のフン放置禁止」という、フンをしている犬に真っ赤なバツのついたステッカーが、地面に貼られていた。
それからしばらくはフンを見なくなった。
季節が変わり、秋空を見ながら歩けるようになったある日、またフンが現れた。
新しくできたアパートの一階のドアの前に、まるで嫌がらせのように大きく1個。
人なんじゃないか、と思った。
犬を真似た人の仕業なんじゃないか。
これに限っては、ドアを開けたらフンがつく位置にあったので夜には撤去されていた。
程なくして、前回のアパートの近くの電信柱の麓で2個見た。
最初の頃は、飼い犬のフンを放置するような人が住む無法地帯に引っ越してきてしまったことがショックだったけど、
それから数日後に、また別の電信柱でフンを見た時は、あまりの大きさに羨ましいとさえ思った。
もし1匹の犬の仕業だったとして、こんなにもいろんな場所でフンをするのだろうか。
一気に2個もフンするのだろうか。
もし2匹の犬を連れていたとして、同じ場所で仲良くフンするのだろうか。
フンのあまりの大きさはゴールデンレトリバーならありえるのだろうか。
次はどの場所に現れるんだろう。
重力ピエロの壁のグラフィティアートを追う兄弟のように、何かにたどり着けるかもしれない。